上流案件やFDE案件の面談で聞かれるのは、使える言語やフレームワークよりも、「顧客の業務をどう理解し、何を課題として決め、どう進めたか」です。準備で一番効くのは、ASIS・TOBEの業務フローや課題一覧表など、上流の成果物を実物で見せられるようにしておくことです。この記事では、よく聞かれる質問と答え方、成果物の見せ方、当日の流れを整理します。

実装案件の面談との違い

実装案件の面談では、技術スタックの経験年数や、似たシステムを作った経験が中心に聞かれます。上流案件・FDE案件では、それに加えて次のような点を見られます。

実装案件で見られること 上流・FDE案件で加えて見られること
使える言語、フレームワーク 顧客の業務をどう理解したか
似たシステムの開発経験 課題をどう整理し、何を優先したか
担当した機能 顧客と何をどう合意したか
チームでの役割 決まっていないことにどう対処したか

面談する側が知りたいのは、「この人を顧客の前に出して大丈夫か」です。技術力は前提として、顧客と話しながら仕事を進められるかを確かめようとしています。

よく聞かれる質問と答え方

「これまでの案件で、上流にどう関わりましたか」

最も多い質問です。「要件定義に参加しました」だけでは、何をしたのか伝わりません。担当した作業と、そこで作ったものを具体的に話します。

答え方の型は次のとおりです。

  1. どんな業務の、どんなシステムだったか(1文)
  2. 自分が担当した作業(ヒアリングの同席、業務フローの作成、議事録など)
  3. 作ったもの、決まったこと
  4. 自分なりに工夫したこと

例:「受発注業務のWeb化案件で、要件定義の打ち合わせに同席し、議事録と現状の業務フローを担当しました。打ち合わせで出た例外の注文パターンを組み合わせ表にまとめ、仕様に抜けていた返品時の扱いを顧客に確認してもらいました」

上流の経験がほとんどない場合も、正直に「実装が中心でした」と伝えた上で、仕様の背景を確認した経験や、自分で練習として作った成果物を話せば問題ありません。

「顧客の要望が曖昧なとき、どうしますか」

見られているのは、曖昧さを自分で埋めてしまわないかです。答えには、現状を聞く、あるべき姿を聞く、決まっていないことを残す、の3つを入れます。

例:「まず今どうやっているかを聞いて業務フローに描き、どうなってほしいかを聞きます。差の部分を課題として整理し、決めきれない点は未決として残して、次回の打ち合わせで決めてもらうようにします」

「顧客と意見が合わないとき、どうしますか」

ここでは、相手を説得する話より、判断材料をそろえて顧客に選んでもらう話の方が伝わります。複数の案を出し、それぞれで何ができて何ができないかを示した経験があれば、それを話します。

「生成AIをどう使っていますか」

FDE案件ではよく聞かれます。使っているツール名を並べるより、どの作業に使い、どこは使わないかを話す方が伝わります。例えば「試作の実装やテストデータの作成には使い、業務ルールで決まる計算は通常のコードで書いて、出力を自分で確認しています」のように、使い分けと確認の仕方をセットで話します。

「この案件で、最初の1か月に何をしますか」

案件の説明を受けた後に聞かれることがあります。いきなり作るものを答えるより、業務の理解から入る順番を話します。「最初の2週間で関係者に話を聞いて現状の業務フローと課題一覧表を作り、3週目に優先する課題を顧客と決め、4週目に試作の範囲を決めたい」のように、成果物と時期で答えると具体的になります。

持参する成果物と見せ方

上流の経験を言葉だけで伝えるのは難しいので、成果物を見せられるように準備します。守秘義務のある実案件の資料はそのまま見せられないため、題材を変えて作り直すか、自分で練習として作ったものを使います。

準備したい成果物

成果物 見せる目的 準備のコツ
ASIS業務フロー 業務を読む力 担当ごとのレーンで、紙やExcelのやり取りも入れる
課題一覧表 聞く力 ASIS・TOBE・GAPの3つに分け、空欄も残したまま見せる
イシューツリー 構造化する力 末端に「何で確かめるか」を書く
TOBE業務フロー あるべき姿を描く力 ASISと並べて、変わった箇所に印をつける
要件一覧と複数案の見積もり 決める力 案ごとに「できること」の違いを書く

全部そろっていなくても構いません。ASIS業務フローとTOBE業務フローの2枚を並べて見せるだけでも、業務を理解して変化を描けることが伝わります。描き方はASIS業務フローの記事とTOBE業務フロー設計の記事にまとめています。

見せ方の順番

成果物は、作った順に一つずつ見せるより、1つの題材で流れとして見せる方が伝わります。

  1. 題材の説明(どんな業務か、なぜ選んだか)を1分で話す
  2. ASIS業務フローを見せ、困りごとがどこにあるかを指で示す
  3. 課題一覧表で、困りごとを数字で整理したことを見せる
  4. TOBE業務フローで、何が変わるかを示す
  5. 作るもの・作らないものを、どう決めたかを話す

全体で5分程度に収めるのが目安です。面談の時間は限られているので、相手が興味を持った資料を深掘りしてもらえるよう、最初は短く見せます。

守秘義務への配慮

実案件の資料を使う場合は、社名、人名、金額、固有の業務名を消すだけでは不十分なことがあります。業界や規模から顧客が特定されることもあるので、契約で許されている範囲を確認した上で、題材ごと置き換えるのが安全です。「実案件を元に、題材を変えて作り直したものです」と一言添えると、守秘への意識も伝わります。

スキルシートの書き方

面談の前に提出するスキルシートや職務経歴書も、上流案件向けに書き方を変えると伝わりやすくなります。実装案件向けのシートは、案件ごとに言語・フレームワーク・担当機能を並べる形が一般的です。上流案件向けには、各案件の欄に次の3点を加えます。

  • 業務:どんな業務のシステムだったか(受発注、在庫管理、勤怠など)
  • 関わった工程:ヒアリング同席、業務フロー作成、要件の整理、議事録、顧客との仕様確認など
  • 作ったもの:業務フロー、課題一覧、要件一覧、テスト計画など、コード以外の成果物

例えば「在庫管理システムの改修(Java)」だけでなく、「倉庫の入出庫業務。現場担当へのヒアリングに同席し、例外の入出庫パターンを一覧にまとめて仕様の確認に使った」と書きます。1案件につき2〜3行増えるだけですが、面談でその行を起点に質問してもらえるようになります。

書けることが少ない場合は、練習で作った成果物を「自主制作」として1欄設けても構いません。題材と作ったものを書いておけば、面談で見せる流れにつなげられます。

面談前の準備チェックリスト

準備項目 済
案件の説明を読み、担当工程が上流のどこに当たるか確認した
上流への関わり方を、作業と成果物で話せるよう整理した
曖昧な要望への対処を、自分の経験で1つ話せる
ASIS・TOBEの業務フローを、守秘に配慮した形で用意した
生成AIの使い方を、使う場面・使わない場面で話せる
「最初の1か月に何をするか」を成果物と時期で答えられる
契約形態(準委任・請負)と担当範囲について質問を用意した

最後の質問の準備も大切です。担当範囲や成果物の扱いは、面談の段階で確認しておくと参画後のずれを防げます。契約形態の違いは準委任と請負の違いを参照してください。

面談で逆に聞いておきたいこと

面談は選ばれる場であると同時に、案件を選ぶ場でもあります。次のような質問をすると、参画後の働き方が具体的に分かります。

  • 顧客側で業務を説明してくれる担当者は誰か、どのくらい時間をもらえるか
  • 現状の業務フローや課題の整理は、どこまで進んでいるか
  • 最終的な判断をするのは誰か
  • 自分の成果物として期待されているものは何か

これらへの答えが曖昧な案件は、上流の整理から自分が担う可能性が高い案件です。それ自体は悪いことではありませんが、期待値を最初にそろえておく必要があります。

この記事のまとめ

  • 上流・FDE案件の面談では、業務の理解、課題の整理、顧客との合意の仕方を見られる
  • 上流への関わり方は「担当した作業」と「作ったもの」で具体的に話す
  • 曖昧な要望には、現状とあるべき姿を聞き、未決事項を残す対処を話す
  • ASISとTOBEの業務フローを並べて見せるだけでも、上流の力は伝わる
  • 成果物は1つの題材で流れとして5分程度で見せ、守秘に配慮して題材を置き換える
  • 担当範囲や判断者を逆に質問して、参画後の期待値をそろえる

面談の前に担当工程を読み、自分の経験との差を言葉にしておく手順は、ロードマップのステップ7「現場に出る」にまとめています。持参する成果物がまだ手元にない場合は、ステップ1「業務を読む」から一つずつ作っていくと、面談で話せる材料がそろいます。